お知らせ:佐藤二葉『アンナ・コムネナ』第2巻刊行

 新年以来更新が滞っており恐縮です。調べ物は進めていたりするのですが、去年に比べて諸々忙しくなってしまったこともあり、なかなか記事を出すに至っていないのが現状です(下書きにある翻訳とは別に、単発の記事を近いうちに出したいと思っています)。

 

 さて、このたび、佐藤二葉さんの『アンナ・コムネナ』の第2巻が発売を迎えました。第1巻に引き続き、私も校正のお手伝いのようなことをさせていただいていたのですが、第2巻では前巻以上に重厚なストーリーが展開され、個人的には読んでいて倍ぐらいのボリュームに感じました(1巻はそもそもビザンツの人々や世界が漫画になって動いているということがあまりに嬉しく、勢いで一気に読んでしまったということもあると思います)。

 多くの人にとってネタバレにならないと思う範囲で個人的に推したい点を一つ挙げるとすれば、ツイ4の連載でも既に登場している、アンナの家庭教師のテオドロス・アネマスという人物です。彼から学ぶことを糧に、アンナや周囲の人々はいったいどのように変わっていくのか、そのことが今後にどのような影響を及ぼすのか、3巻以降にますます期待せざるを得ません。またそれ以上に、彼の存在を通じて私は、やはりこの作品は『アレクシアス』の著者としてのアンナ・コムネナとの対話の試みでもあるのだという実感を新たにしました。どうしても抽象的な言い方ばかりになってしまいますが、彼もまた、様々な意味でこの作品の醍醐味を感じられるキャラクターの一人だと思います。

 アネマスの良さもさることながら、アンナとニケフォロスをはじめとする登場人物同士の関係も当然深まっていきます。それと同時に、前巻に続き、それぞれの人物はこの帝国と社会の中で自身がどのようにあるべきかという問いに事あるごとに直面しており、そのことが作品を一層面白く、味わい深くしています。これまでの蓄積も丁寧に活かされているため、最初に述べたように分量に勝る読後感が得られるのではないでしょうか。今回も華麗なビザンツの世界を存分に味わうことのできる紙の本での入手が個人的にはお勧めです。

 こうして宣伝ばかりしているのも気が引けるので、今後もどうにか労働と折り合いをつけながら(それこそ『アンナ・コムネナ』がさらに楽しめるような)史料や研究を紹介する記事を用意していきたいと思っています。どうか見守っていただければ幸いです。最後になりましたが、前回に引き続き貴重な機会を下さった佐藤二葉さん、第2巻の見本をご恵贈下さいました星海社様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

護国寺駅の改札に6/12(日)まで掲示されている気高いポスター。)